WEBデザイナーがWEBサイトを作る仕事の各工程を見ていくシリーズ。
今回は非常に重要な「契約書の締結」についてのお話です。
前回までのおさらい
WEBデザイナーが実際にどのような業務を行っているか、実際のWEB制作の流れをご紹介していきます。
最下段に見出しがあるので、各項目を見たい方は参考にしてみてください。
前回は、案件がスタートした際にクライアントとの打ち合わせ時に聞いてくべき「ヒアリングシート」についてまとめました。
今回はヒアリングを聞いた上での契約書の締結のお話です。
WEBデザインをしたい方からすると「関係ない・面倒そう」と思われる項目ですが、企業間双方での契約書の締結は商取引においては非常に重要な項目です。
契約書の締結
企業間・フリーランスどちらの場合でも契約書の締結が入ってきます。
最悪、クライアントの情報が制作側により流出などになった場合は損害賠償の可能性もありますので、この契約書の締結は非常に重要です。
また、双方がお互いの作業範囲を事前に書面に起こしたり、追記がある場合は「覚書」にて対応をしたりします。
双方が納得した上で「秘密保持契約書(NDA)」や「業務委託契約書」、「業務請負契約書」等を取り交わします。
こちらの工程はWEBデザイナー側でタッチする可能性は低いですが、上長やWEBディレクター・フリーランスで動く人にとってマストなので、頭の片隅には置いておきましょう。
前回のヒアリングで聞いた内容から「見積書」を算出し、企業によっては、「注文書」「発注書」のやり取りがあった後に、案件がスタートします。
WEBデザイナーと係わり合いがありそうな主な契約書についてはざっくり下記にご紹介をしていきます。
秘密保持契約書(NDA)
まずは分かりやすくWikipediaから引用をしてみましょう。
秘密保持契約(ひみつほじけいやく、英語: Non-disclosure agreement、略称: NDA)とは、ある取引を行う際などに、法人間(または自然人との間)で締結する、営業秘密や個人情報など業務に関して知った秘密(すでに公開済みのものや独自にないし別ソースから入手されたものなどを除外することが多い。)を第三者(当該取引に関連する関連会社や弁護士、公認会計士などを除外することが多い。)に開示しない(行政庁や裁判所の要求する場合、その他法律上開示義務がある場合などが除外されることが多い。)とする契約。機密保持契約、守秘義務契約ともいう。非開示契約とも訳されるが、これは特に、必ずしも本来の秘密でない情報も対象とする場合に用いられる。
引用元:秘密保持契約
例えば、クライアント側のWEBサイトにおいて「通販サイト」、「情報サービスサイト」、「宿泊サイト」等のWEBサービスを運用している場合、当然の事ながらクライアントのWEBサイトのデータベース上に顧客情報が蓄積されていることになります。
受注側のWEB制作会社内のWEBディレクター、WEBデザイナー、htmlコーダー、WEBエンジニアも案件によっては、これらのクライアントのWEBサービスの情報を共有して制作や開発を進めなければならないケースがあります。
具体的にはWEBサイトのリニューアル案件等ですね。
また、別ケースですとクライアントが別分野で新しいビジネスにチャレンジしようとしていて、それをWEB制作の面からサポートする事もあります。
もし「クライアントが管理している一般ユーザーの個人情報」や「クライアント側がこれからやろうとしているビジネスの詳細(アイディア・ノウハウ)」が外部に漏れてしまったら双方にとって一大事と言うことが分かりますね。
たまにニュースなどでもこの”個人情報流出”について話題となりますが、場合によっては億単位の損害賠償問題まで発展するケースもあります。
こうした事例を避けるために「どんな情報を機密として取り扱うか」、「機密の保持はどうするか」、「もし機密が漏れた場合の損害賠償はどうるか」、「どの裁判所で裁判を行うか」等々を決める契約書が「秘密保持契約書(NDA)」と呼ばれるものになります。
業務委託契約書・業務請負契約書
「秘密保持契約書(NDA)」を取り交わしつつ、正式な契約書として「業務委託契約書・業務請負契約」を締結するケースもあります。
「どのような業務範囲を受注するのか」、「いつ契約がスタートするのか」、「いつ契約が終了するのか」、「細かい点は別途協議する」等の項目を双方で確認し、製本をしてから案件がスタートするのが理想です。
何も決まらずに口約束で曖昧なままWEB制作がスタートしてしまうと、後々トラブルになった際に水掛け論となってしまいますので、あらかじめこうした業務に関わる事柄を双方で納得した上でWEBの実制作に入る方が望ましいでしょう。
見積書
契約書の締結とは少し異なりますが、案件がスタートする前にWEBデザイナー・htmlコーダー・WEBエンジニアなど各部門の作業範囲を確定させ、それに基づいて「見積書」を作成し、クライアント側に提示することはWEBディレクターの重要な仕事の一つになります。
例えば、クライアント側は打ち合わせで「50万円くらいで作れるだろう」と聞いていたのに、蓋を開けてみて案件終了時には「○○や○○を対応したので100万円の請求になります」と、WEB制作会社から請求をされたらどうなるでしょうか?
当然の事ながら、お金のお話でもめますよね…。
制作において稼動した分としてクライアントへ請求を出したくなる気持ちはある程度理解できますが、こうしたケースを避けるためにも「○○分の対応をするのには○○円掛かります」と、受注側のWEB制作会社では明確にクライアントへ伝えることは、お金が関わるだけにとても重要です。
凄いざっくりと書いてしまえば、レストランでメニューに掛かれた金額以上は請求がないのと同じです。
一部のWEB制作会社やフリーランスの人は、こうしたお金のトラブルを避けるために、ある程度対応する項目を洗い出して”WEB制作における料金表”を設定しているところもあります。
注文書・発注書
諸々契約書も締結したし、直ぐに制作開始だ!とはなりません。
クライアント側が「○○の内容で発注します」と注文書・発注書を出してから案件がスタートする場合もあります。
基本的には既にヒアリングした内容→業務委託契約書で書かれた内容→担当者同士で話した内容が、そのまま「発注書」に項目として記載がされているはずですので、双方で納得がいっていれば問題ないはずです。
組織によっては上長の承認印が必要だったりと、少し締結までに時間が掛かる場合もありますので納期に注意して並行で進んでいく事でしょう。
この記事のまとめ
ざっとWEB制作に必要そうな契約書について後生かいりましたが、どの契約書でも法務的な専門知識が必要なケースが多いです。
インターネットで検索をすると、それぞれの必要書類についての雛形(テンプレート)や事例なども紹介されているWEBサイトが多数ありますので、興味をもたれた方は色々と探してみるとより理解しやすいかと思います。
上述のようにある程度のテンプレートはネットや社内で出回っていますが、当然の事ながら企業間同士・企業対フリーランスの場合でも案件次第で各書類の内容が異なってきます。
企業に所属をしているWEBディレクター・WEBデザイナーであれば、既に社内に法務部があったり、委託契約をしている行政書士・顧問弁護士等に相談や依頼をすることができますが、フリーランスの方ですとご自分で判断をする場面も出てくるでしょう。
心配な時はこうした”商取引の契約における専門家”に知識を仰いだ方が安全なケースもあります。
実際のWEBサイト制作の流れと各工程
- 第1回:クライアントからの要望をヒアリング
- 第2回:契約書の締結
- 第3回:スケジュール・ガントチャートの作成
- サイトマップとワイヤーフレームの作成
- Photoshopでデザインをしていく
- Dreamweaverでhtmlコーディングをしていく
- サーバーに出来上がったデータを納品・アップロードする
- 請求書を送る